基礎知識
夜中に何度もトイレに起きるのは睡眠時無呼吸が原因?
久井 宏真
2026/9/7
夜中に何度もトイレに起きる「夜間頻尿」は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)でみられる症状の一つです。大きないびきや睡眠中の呼吸停止、朝の頭痛、日中の眠気などもある場合は、睡眠中の呼吸が関係していないか相談してください。
ただし、夜間頻尿の原因は睡眠時無呼吸だけではありません。前立腺や膀胱の病気、糖尿病、心臓・腎臓の病気、飲水や薬の影響などでも起こります。「年齢のせい」「前立腺のせい」「無呼吸のせい」と、一つに決めつけないことが大切です。
この記事では、成人の閉塞性睡眠時無呼吸を中心に、夜間頻尿が起こる仕組み、ほかの原因との違い、検査と治療の考え方を解説します。
夜間頻尿とは?何回起きたら相談した方がよい?
夜間頻尿は、眠った後に排尿のために1回以上起きる症状を指します。 ただし、1回起きたというだけで、特定の病気や治療の必要性が決まるわけではありません。回数に加えて、睡眠や生活への影響、ほかの症状を確認します。
例えば、毎晩繰り返し起きて眠りが途切れる、以前より回数が増えた、トイレの後に眠れず翌日つらい、といった場合は相談する目安になります。「年を取れば仕方がない」と我慢し続ける必要はありません。
睡眠時無呼吸で、なぜ夜中のトイレが増える?
睡眠時無呼吸では、夜間に作られる尿が増えることと、眠りが妨げられてトイレに行く機会が増えることの、両方が関係する場合があります。
夜間に作られる尿の量が増える
閉塞性睡眠時無呼吸では、気道が塞がった状態で息を吸おうとするため、胸の中の圧が大きく変化します。こうした変化に伴って、心臓から分泌される「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」が増えることが、夜間の尿量増加に関わると考えられています。
ANPには、塩分と水分を尿として排出しやすくする働きがあります。睡眠時無呼吸患者を調べた研究では、CPAPで呼吸を改善した際に、ANPの濃度や夜間の尿量が低下していました。単に目が覚めやすくなるだけでなく、実際に夜間の尿が増えている場合もあるということです。
目が覚めた後に、尿意が気になる
夜中のトイレは、必ずしも膀胱がいっぱいになって目覚める場合だけではありません。眠りが浅く、途中で目が覚めると、そのたびに尿意が気になってトイレへ行く場合もあります。
「尿意で目が覚めること」と「先に目が覚めてからトイレへ行くこと」は、区別して考えます。 どちらなのか分からない場合も、無理に決める必要はありません。診察では、排尿の回数や量と、睡眠中の様子を合わせて確認します。
前立腺や膀胱の病気とは、どう違う?
夜間頻尿には、尿の作られ方、膀胱に尿をためる働き、眠りの状態など、複数の原因が関係します。 次の表は、診察で確認する手がかりです。症状だけで原因を確定するものではありません。
考えられる原因 | 一緒に確認したいこと |
|---|---|
睡眠時無呼吸 | 大きないびき、呼吸停止の指摘、日中の眠気、朝の頭痛などがある。 |
過活動膀胱 | 急に我慢しにくい尿意が起こる、日中もトイレが近い、尿が漏れることがある。 |
前立腺肥大症など、尿を出しにくくする病気 | 尿の勢いが弱い、出始めるまで時間がかかる、排尿後も残っている感じがある。 |
糖尿病・心臓や腎臓の病気など | 尿量が増えている、強い喉の渇きやむくみがある、持病の状態が変化している。 |
飲水・薬・睡眠環境の影響 | 寝る前に多く飲む、利尿薬を使用している、ほかの理由で夜中に目が覚める。 |
前立腺の病気がある人に睡眠時無呼吸が重なったり、飲水の影響と膀胱の問題が重なったりすることもあります。一つの原因が見つかっても、それだけですべての夜間頻尿を説明できるとは限りません。
泌尿器科の薬で改善しなければ、睡眠時無呼吸?
薬で改善しないことだけで、睡眠時無呼吸とは判断できません。 夜間頻尿には複数の原因があるため、治療への反応が乏しい場合は、原因や治療方針を見直します。
その際、大きないびきや呼吸停止を指摘されているなら、排尿の症状だけでなく、その情報も主治医に伝えてください。睡眠時無呼吸の評価を追加するか考える手がかりになります。
どのような場合に、睡眠時無呼吸の検査を相談する?
夜間頻尿に加えて、いびきや睡眠中の呼吸停止がある場合は、睡眠時無呼吸の検査が必要か相談してください。 朝の頭痛や口の渇き、日中の眠気・疲労感なども、診察で伝えたい症状です。
特に、家族から呼吸停止を繰り返し指摘されている場合は、眠気が目立たなくても相談してください。日中に眠くないことだけでは、睡眠時無呼吸を否定できません。
一方、夜間頻尿だけがある場合は、最初から睡眠時無呼吸に限定せず、排尿の状態や持病、飲水・服薬なども確認することが大切です。
夜間頻尿は何科に相談する?
排尿の困りごとが中心なら、泌尿器科やかかりつけ医が相談先になります。 尿の出にくさ、急な尿意、尿漏れなども伝え、必要な評価を受けてください。
いびきや呼吸停止もある場合は、睡眠時無呼吸の検査に対応する内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科などへの相談も考えます。必ず泌尿器科の治療を終えてからでなければ、睡眠中の呼吸を調べられないわけではありません。 すでに通院している方は、現在の診断や治療内容を伝えてください。
血尿や痛みがある場合は、無呼吸のせいにしない
血尿や排尿時の痛みがある場合は、尿路の病気について受診してください。 特に、発熱・悪寒や背中、脇腹の痛みを伴う場合は、感染症などの評価を急ぐ必要があります。
尿が出なくなった、下腹部が強く痛む場合は、睡眠検査の予約を待たず、速やかに医療機関を受診してください。
受診前には「回数」だけでなく「尿の量」も確認する
夜中に何回トイレに行くかに加え、1回にどのくらい尿が出ているかも、原因を考える手がかりになります。 排尿の時刻や量を記録する「排尿日誌」は、夜間の尿量が多いのか、少量ずつ頻繁に排尿しているのかを整理するのに役立ちます。
記録すること | 内容 |
|---|---|
排尿の時刻と量 | 昼間と夜間の排尿時刻、可能であれば1回ごとの尿量 |
眠っていた時間帯 | 就寝・起床時刻、途中で目が覚めた時刻 |
飲み物 | いつ、何を、どのくらい飲んだか |
排尿時の症状 | 急な尿意、尿漏れ、出にくさなどがあったか |
医療機関では、数日間の排尿日誌をもとに評価することがあります。ただし、記録項目を増やしすぎると負担になるため、必要な記録方法は受診先に確認してください。
記録をすべて揃えてからでないと、受診できないわけではありません。 まずは「毎晩何回くらい起きるか」「いびきや呼吸停止を指摘されているか」を伝えるところからで構いません。
睡眠時無呼吸は、どのように検査する?
症状や持病を確認し、必要に応じて睡眠中の呼吸を測定します。 自宅で行う簡易検査や、脳波なども測定するPSG(睡眠ポリグラフ検査)を、状態に応じて選びます。
睡眠時無呼吸を疑って行った簡易検査が陰性・判定不能だった場合や、記録が不十分だった場合には、その結果だけで病気を否定せず、PSGによる詳しい評価が推奨されています。
また、睡眠時無呼吸の簡易検査は、夜間頻尿の原因をすべて調べる検査ではありません。 排尿の症状については、必要に応じて尿検査などの別の評価を組み合わせます。
CPAP治療で、夜中のトイレは減る?
睡眠時無呼吸が夜間頻尿に関係している場合は、CPAP治療によってトイレの回数が減る可能性があります。 CPAPは、睡眠中に空気の圧で気道を開いた状態に保つ治療です。
睡眠時無呼吸患者274人を調べた研究では、CPAP治療後に、全体の42.3%で夜間の排尿回数が1晩あたり1回以上減少していました。ただし、患者の回答に基づく治療前後の比較であり、全員が同じ程度に改善することを保証するものではありません。
「夜間頻尿があるからCPAPを使う」のではなく、まず睡眠時無呼吸を診断し、CPAPの適応を判断することが大切です。 治療方法は、検査結果や症状に応じて選びます。
CPAPを使っても、夜間頻尿が残る場合は?
夜間頻尿が残っていることだけで、CPAPが効いていないとは判断できません。 CPAPの使用時間や呼吸の改善状況を確認するとともに、膀胱・前立腺の病気、飲水・薬の影響など、ほかの原因も考えます。
トイレの回数だけを理由に、自己判断でCPAPを中止したり、設定を変えたりせず、担当医に相談してください。治療の評価では、夜間頻尿の変化と、睡眠中の呼吸のデータを分けて確認します。
自分でできる対策はある?
寝る前に多く飲んでいる場合は、飲む量や時間帯を見直すことが役立ちます。 夕方以降のカフェインやアルコールも、排尿や睡眠に影響することがあるため、摂取の習慣を振り返りましょう。
ただし、トイレを減らすために、一日を通して必要な水分まで極端に減らすことは勧められません。 心臓や腎臓の病気などで水分摂取の指示を受けている方は、その指示に沿って医師と調整してください。
利尿薬などを使用している場合も、自己判断で中止せず、服用時刻や薬の影響について処方医に相談します。生活習慣の見直しだけで、呼吸停止の指摘や続いている症状への相談を先延ばしにしないことが大切です。
ひさいクリニックで、睡眠時無呼吸の検査を相談する
ひさいクリニックでは、睡眠時無呼吸が疑われる方に、オンライン診療と自宅での簡易検査を組み合わせた診療をご案内しています。
診察で症状を確認し、必要に応じて自宅簡易検査をご案内します。検査機器はご自宅へ郵送されます。届いた機器の説明を読み、ご自宅で検査を行っていただく方法です。
予約 → オンライン診察 → 検査機器の郵送 → 自宅で検査 → 結果説明・CPAP治療の適応判断
検査後は結果をご説明し、CPAP治療の適応を判断します。検査を受けた方全員がCPAP治療を始めるわけではありません。オンライン診療の可否や、必要な検査は診察で判断します。
「夜中に何度もトイレに起き、いびきも指摘されている」「夜間頻尿が続き、家族から呼吸停止を指摘された」「睡眠時無呼吸が関係していないか調べたい」という方は、WEB予約からご相談ください。
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