CPAP治療
CPAPを旅行・出張・飛行機・停電時に使う方法
久井 宏真
2026/9/7
CPAPは、旅行や出張のときも、原則として眠る際に使用します。 自宅以外で治療を続けるためには、本体やマスクを持参するだけでなく、宿泊先の電源、飛行機での取り扱い、機器が使えなくなった場合の連絡先も確認しておくことが大切です。
特に飛行機では、持ち込みが認められていても、機内で使用できるとは限りません。 航空会社、国内線・国際線、機器や電源の種類によって条件が異なるため、出発前に確認してください。
この記事では、成人の閉塞性睡眠時無呼吸に対するCPAPについて、旅行・出張・飛行機での準備と、停電時の対応を解説します。在宅人工呼吸器や酸素療法などを併用している方は、それぞれの治療に必要な備えを、別途主治医や機器の供給会社と確認してください。
一泊の旅行でも、CPAPは持って行った方がよい?
短い旅行でも、CPAPを使用することが基本です。 CPAPは、使っている間に空気の圧で気道を保つ治療であり、自宅で十分に使った効果を、旅行中の睡眠へ「貯めておく」ものではありません。昼寝や、夜勤後の日中の睡眠でも同じ考え方です。
CPAPを中止した患者を調べた比較試験では、比較的短期間で睡眠時無呼吸が再び現れ、眠気も戻ることが確認されています。「一泊だけなら、誰でも外して大丈夫」と一律には判断できません。
持ち運びが難しい、宿泊先に電源がないなどの事情がある場合は、旅行直前ではなく、予定が決まった段階で相談してください。「旅行に行くので治療を休む」と決める前に、継続できる方法を確認しましょう。
旅行・出張に持って行くものは?
普段使用している一式を、接続できる状態で確認してから収納します。 本体だけ持参しても、電源アダプターやマスクの接続部品がなければ、いつもどおりに使用できません。メーカーも、移動時には専用バッグなどで機器を保護するよう案内しています。
持ち物 | 出発前に確認すること |
|---|---|
CPAP本体・電源アダプター・電源コード | 本体に対応する正しい電源一式がそろっているか |
マスク・ヘッドギア・チューブ・接続部品 | 普段どおりに組み立て、使用できるか |
加湿器・必要な付属品 | 持参する部品、水の準備、加湿を使わない場合の正しい設定 |
機種名・説明書・連絡先 | メーカー名と型番、機器の供給会社や受診先への連絡方法 |
旅行先に応じた電源用品 | 必要なプラグや、使用が確認されたバッテリー・ケーブルなど |
忘れ物を防ぐには、荷造りの前に一度すべてを接続して作動を確認し、その一式をまとめて収納する方法があります。帰宅時も、ホテルのベッド脇やコンセントに、アダプターや小さな部品を残していないか確認してください。
加湿器の水は、入れたまま運んでよい?
移動前に、水タンクの水を空にしてください。 水が入った状態で傾けたり揺らしたりすると、本体への水の流入や故障につながるおそれがあります。タンクは機器の説明に従って外し、適切に収納します。
「少ししか残っていないから大丈夫」と考えず、移動する前に確認しましょう。宿泊先で使い終えた翌朝も、タンクの水を確認してから荷物に入れてください。
海外のホテルでも、日本のCPAPを使える?
まず、使用している機器と電源アダプターが、現地の電圧・周波数に対応しているかを確認します。 例えば、AirSense 11の日本語取扱説明書では、付属ACアダプターの入力範囲が100〜240V、50〜60Hzとされています。ただし、これをすべてのCPAPに当てはめることはできません。
プラグの形を変える「変換プラグ」と、電圧を変える機器は別です。 プラグが差し込めることだけで、電源が適合しているとは判断しないでください。使用する本体・アダプター・コードの組み合わせを、説明書や機器の供給会社で確認します。
海外で故障しても、いつもの会社が対応してくれる?
国内でのサポートと、海外で受けられる対応は同じとは限りません。 例えば、フクダ電子の患者向け案内では、海外へ持参する際は医療機関に相談することに加え、海外での故障・トラブルには対応できない旨が示されています。
長期出張などでは、渡航先と期間を伝え、故障時の連絡方法や、現地で使用できなくなった場合の対応を確認してください。電源の仕様に対応していることと、海外での修理・交換が保証されていることは別です。
加湿器の水は、現地の飲料水でよい?
水の指定は、機器やタンクによって異なります。 同じメーカーでも、精製水を指定するタイプと、条件を満たす飲料水を使用できるタイプがあります。「飲める水なら、どの加湿器でも同じ」とは考えず、使用する機器の説明を確認してください。
必要な水を入手しにくい場所へ行く場合は、出発前に相談しておくと安心です。加湿を使わずに運転する方法がある機器でも、タンクや専用カバーを正しく取り付ける必要があります。タンクを外したまま、開口部を放置して使うといった自己流の組み立ては避けてください。
海外や電波の届かない場所では、CPAPが使えない?
治療の作動と、使用データの通信は、別の機能です。 例えばResMedは、AirSense 10などを海外で使用した際、データを無線送信できない場合でも機器に保存し、帰国して通信可能な環境に戻ると送信すると説明しています。
そのため、通信マークが出ないことだけで、直ちに治療も止まっているとは限りません。ただし、保存方法や通信の仕組みは機種によって異なるため、長期滞在前にはデータをどう確認するかも相談してください。
CPAPは飛行機に持ち込める?機内でも使える?
持ち込みの条件と、機内使用の条件を、それぞれ確認する必要があります。 航空会社の公式案内では、同じ会社でも国内線・国際線で取り扱いが異なる場合があります。
以下は、2026年9月時点で確認した公式案内の概要です。実際の搭乗前には、利用便について最新の条件を確認してください。
航空会社・路線 | 確認したい取り扱い |
|---|---|
ANA | 機内で使用する場合は事前連絡が必要。機種・座席・電源などの条件を確認する。機内で加湿機能は使用できない |
JAL国内線 | 持ち込みは可能だが、機内での使用は不可。バッテリー駆動の場合は事前確認が必要 |
JAL国際線 | 機内使用の有無にかかわらず、機器情報の事前登録が必要。使用する場合は、座席や電源などの条件を確認する |
ANA・JALで条件が同じとは限らず、「以前の便では使えたから、今回も確認不要」とは判断できません。
共同運航便では、航空券を販売した会社ではなく、実際に運航する航空会社の規定を確認してください。乗り継ぎがある場合は、区間ごとに確認しておくことが大切です。
航空会社には、何を伝えればよい?
メーカー名、製品名・型番、サイズ、バッテリーの有無と種類、機内で使用する予定があるかを伝えます。機器のラベルを撮影しておくと、型番などを確認しやすくなります。
例えば、次のように問い合わせます。
「睡眠時無呼吸の治療でCPAPを使用しています。機内へ持ち込み、飛行中に眠る際にも使用したいです。機種とバッテリーの情報を伝えますので、利用条件を確認したいです。」
機内で使用できない便や、必要な電源を確保できない場合は、航空会社の規定を無視して使うのではなく、予約前に便の選択や移動中の対応を相談してください。
英文の診断書は、必ず必要?
すべての航空会社・路線で、英文診断書が一律に必要というわけではありません。 例えば、JALの国際線CPAP案内では、機内使用に当たり所定の診断書の提示は不要とされています。
ただし、機器情報の登録や、別の書類の確認が必要になる場合はあります。診断書、機器の仕様書、航空機内使用への適合を示す文書は、それぞれ役割が違います。 書類を依頼する前に、航空会社が何を求めているか確認しましょう。
機内のコンセントがあれば、そのまま使ってよい?
座席に電源があっても、CPAPへの使用が認められるか、必要な電力を供給できるかを確認します。 航空会社の案内では、利用できない座席や時間帯があり、飛行中に予告なく電源が遮断される可能性も示されています。
したがって、「コンセント付きの座席を選んだので、必ず一晩使える」とは限りません。予備電源が必要か、持参する場合は使用可能かも、航空会社と機器の供給会社に確認してください。
機内使用が認められた場合も、加湿機能の停止や機内モードへの切り替えなど、航空会社と機器の指示に従います。 水タンクに水を入れたまま使用しないよう案内されている機種もあります。出発前に操作方法を確認しておきましょう。
CPAP用のバッテリーは、飛行機に持ち込める?
電池の種類、容量、内蔵か予備か、何のための電源かによって取り扱いが変わります。 CPAP本体が持ち込み可能でも、組み合わせるバッテリーがそのまま認められるとは限りません。型番と、容量を示すWhなどの表示を航空会社へ伝えて確認してください。
特に、スマートフォン用などのモバイルバッテリーは、2026年4月24日から国内の航空輸送ルールが変更されています。機内へ持ち込める個数・容量に加え、機内でのバッテリーへの充電や、バッテリーから他の電子機器への充電にも制限があります。預け入れ荷物に入れることもできません。
手持ちの電源がこのモバイルバッテリーに該当するのか、医療機器用電源としてどのように扱われるのかも含め、航空会社へ確認してください。
「容量が小さいから大丈夫」「医療用と書いてあるから制限はない」「持ち込めるから機内で接続してよい」と、自己判断しないことが重要です。
停電やキャンプに備えるバッテリーは、どう選ぶ?
最初に、使用しているCPAPで使える電源かを確認します。 バッテリーは、容量だけでなく、対応機種、接続方法、必要なケーブルなどが重要です。購入前に、機器の供給会社へ確認してください。
確認すること | 確認したい内容 |
|---|---|
対応する機器 | 自分のCPAPの型番で使用が確認されているか |
接続方法 | 対応する電源アダプターや専用ケーブルが必要か |
使用できる時間 | 自分の設定と加湿の使用条件で、何時間程度使えるか |
停電時の切り替え | 自動で切り替わる構成か、手動でつなぎ替える必要があるか |
充電と保管 | 充電に必要な時間、点検方法、長期保管時の注意点 |
「一晩使える」という表示も、設定や加湿の使用によって変わります。 メーカーも、バッテリーの持続時間は、機器の設定や湿度などの条件に影響されると説明しています。旅行先で初めて使うのではなく、事前に適合を確認し、説明に従った方法で試しておくと準備になります。
加湿を止めると、バッテリーは長持ちする?
加温加湿は電力を使うため、加湿の使用条件はバッテリーの持続時間に影響します。 メーカーが、バッテリー使用時には加湿を停止するよう勧めている機種もあります。
ただし、乾燥が強くて使えなくなる場合もあるため、普段の症状も踏まえて相談します。電池を長持ちさせるために、治療圧を自己判断で下げることとは別です。 適合する電源と、許可された使用方法を確認してください。
また、予備バッテリーを持っているだけで、停電時に自動で治療が継続するとは限りません。暗い中でも接続方法が分かるよう、通常時に確認しておきましょう。
夜中に停電して、CPAPが止まったらどうする?
送気が止まったことに気づいたら、まずマスクを外してください。 CPAPマスクの添付文書では、機器に電源が入っていない場合や、正常に作動していない場合には使用しないよう注意されています。止まった装置につないだマスクを、そのまま着けて眠り続けないでください。
その後は、周囲の安全と体調を確認したうえで、原因と復旧方法を確かめます。
状況 | 対応の考え方 |
|---|---|
停電している | 使用が確認された予備電源があれば、説明に従って接続する。確保できなければ、復旧の見通しと相談先を確認する |
周囲は通電しているが、CPAPだけ止まった | 安全な範囲でコードの接続やエラー表示を確認し、説明書・供給会社の案内に従う |
水ぬれ・破損・焦げたにおいがある | 動作を確かめるために再通電せず、使用を中止して供給会社などへ相談する |
電気が戻った後も、装置が正常に作動し、空気が送られていることを確認してから再装着します。復旧したからといって、浸水や損傷がある機器をそのまま使わないでください。 水分や破損による異常は、通電時の発火などにつながるおそれがあります。
停電が長引いて、使えない場合は?
機器の供給会社や医療機関へ、使えない状況と復旧の見通しを伝えて相談してください。 電源を確保できる場所へ移れるか、対応する予備電源を利用できるかなどを確認します。CPAPには、外部電源がなければ動作しない機種があります。
「何晩までなら必ず安全」と一律に決めず、持病や症状、停止する期間を踏まえて考えます。あらかじめ台風や工事による停電が予想される場合は、停電してからではなく、前もって相談しましょう。
強い息苦しさ、胸の圧迫感・痛みなどがある場合は、機器の問い合わせだけで済ませず、119番などの救急対応が必要です。 海外滞在中は、現地の救急窓口へ連絡してください。
発電機を使う場合に、注意することは?
燃料を使う発電機は、屋内・車内・テント内で使用しないでください。 排気に含まれる一酸化炭素による中毒のおそれがあります。屋外でも、排気が建物やテントに入らないよう、開口部から離し、風通しのよい場所で使用する必要があります。
充電式のポータブル電源と、燃料を燃やす発電機は別のものです。いずれも、CPAPに使えるかどうかは機器との適合を確認し、自己流の配線や接続は避けてください。
旅行先で使えなかった翌日は、運転してよい?
実際に眠気がある、居眠りしそうになる場合は、運転を控えてください。 睡眠時無呼吸に伴う眠気や注意力の低下は、交通事故につながるおそれがあります。
「一晩だけ使えなかったから必ず事故になる」という意味ではありませんが、普段はCPAPで安定していることを、治療できなかった翌日の安全の保証にはできません。 旅行では寝不足や移動の負担も重なるため、眠気を感じたまま運転を続けず、移動方法や予定を見直してください。
また、旅行中に使えない日があったからといって、その後の治療まで中止する必要はありません。使用できる環境に戻ったら治療を再開し、中断が続いた場合や症状が変わった場合は、担当医に伝えましょう。
旅行前に、誰へ何を確認すればよい?
医療機関、機器の供給会社、航空会社では、確認する内容が異なります。 すべてを一つの窓口だけで解決しようとせず、役割を分けて相談すると整理しやすくなります。
相談先 | 主に確認すること |
|---|---|
治療を担当する医療機関 | 旅行中の治療継続、使えない可能性がある場合の対応、長期不在時の診察予定 |
機器の供給会社・メーカー | 海外の電源への対応、バッテリーとの適合、加湿の扱い、故障時の連絡方法 |
実際に運航する航空会社 | 持ち込み・機内使用・電源・バッテリーの条件、必要な申告や書類 |
宿泊先 | ベッド付近のコンセント、機器を置ける場所、必要な電源を確保できるか |
問い合わせの際は、渡航先・旅行期間・機種名・機内で眠る予定・バッテリーの有無をまとめておくと、必要な条件を確認しやすくなります。
旅行のためにCPAPを諦めるのではなく、眠る場所が変わっても治療を続けられるよう、電源と使用条件を準備することが大切です。
ひさいクリニックで、睡眠時無呼吸・CPAP治療を相談する
当院でCPAP治療を受けている方は、旅行や長期出張の予定、現地で機器を使えない可能性などを、余裕を持って診察時にお伝えください。滞在期間が長い場合は、定期診察の予定についても確認しましょう。
航空機への持ち込み・機内使用の可否は、実際に運航する航空会社へ、電源やバッテリーの適合は、使用している機器の供給会社へご確認ください。
初めて睡眠時無呼吸について相談する方には、オンライン診療と自宅での簡易検査を組み合わせた診療をご案内しています。
診察で症状を確認し、必要に応じて自宅簡易検査をご案内します。検査機器はご自宅へ郵送されます。届いた機器の説明を読み、ご自宅で装着して検査を行っていただく方法です。
予約 → オンライン診察 → 検査機器の郵送 → 自宅で検査 → 結果説明・CPAP治療の適応判断
検査後は結果をご説明し、CPAP治療の適応を判断します。検査を受けた方全員がCPAP治療を始めるわけではありません。
「いびきや呼吸停止を指摘された」「出張が多く、睡眠時無呼吸の検査や治療を続けられるか相談したい」という方は、WEB予約からご相談ください。