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睡眠時無呼吸と高血圧・不整脈・心臓病・脳卒中

久井 宏真

2026/9/7

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、いびきや日中の眠気だけでなく、高血圧、心房細動などの不整脈、心臓病、脳卒中とも関係する病気です。 睡眠中の呼吸の異常によって、酸素の低下や血圧・脈拍の変動を繰り返し、心臓や血管に負担がかかることがあります。

CPAPによる治療は、睡眠中の呼吸を改善し、眠気や睡眠に関連する生活の質、血圧の改善に役立つ場合があります。ただし、「CPAPを使えば心筋梗塞や脳卒中を必ず防げる」「血圧や心臓の薬が不要になる」という意味ではありません。 睡眠時無呼吸と、すでにある持病の両方に対応することが大切です。

この記事では、成人の閉塞性睡眠時無呼吸を中心に、心臓・血管の病気との関係、治療で期待できること、検査を相談する目安を解説します。

睡眠中の無呼吸は、なぜ心臓や血管に負担をかける?

呼吸が止まることによる酸素低下に加え、短い覚醒や、息を吸おうとする際の胸の中の圧の変化が関係します。 眠っている間にも、体は呼吸の異常に繰り返し対応しています。

睡眠中に起こること

心臓・血管への影響

酸素が低下し、呼吸の再開で戻ることを繰り返す

血管の働きや炎症などに影響する可能性がある

呼吸の異常で短い覚醒を繰り返す

交感神経が活発になり、血圧や脈拍が変動する

塞がった気道に対して、息を吸おうとする

胸の中の圧が大きく変化し、心臓にかかる負担が増える

交感神経は、活動時や緊張時などに働く神経です。閉塞性睡眠時無呼吸では、こうした変化が一晩のうちに繰り返されます。「本人は眠っているつもりだから、体も十分に休めている」とは限りません。

ただし、心臓や血管の病気には、年齢、喫煙、肥満、糖尿病など多くの要因が関係します。睡眠時無呼吸が見つかったことだけで、持病の原因がすべて分かったわけではありません。

睡眠時無呼吸があると、血圧は上がりやすい?

睡眠時無呼吸は、高血圧の原因・悪化要因の一つです。 特に、夜間に血圧が十分に下がらない、睡眠中に血圧が大きく変動するといった特徴がみられる場合があります。

一般に、血圧は睡眠中に下がります。しかし、睡眠時無呼吸がある方では、夜間の低下が小さかったり、反対に夜間の方が高かったりすることがあります。

昼間の診察室で血圧が落ち着いていても、それだけでは睡眠中の血圧の動きまで分かりません。 朝の家庭血圧が高い場合なども、測定記録と睡眠中の症状を主治医に伝えてください。

薬を飲んでも血圧が下がりにくい場合は、検査を考える?

治療を続けても血圧が十分に下がらない場合は、睡眠時無呼吸が関係していないかを確認する理由になります。 米国心臓協会は、治療抵抗性・コントロール不良の高血圧がある患者について、睡眠時無呼吸の評価を推奨しています。

ただし、血圧が下がりにくい原因は無呼吸だけではありません。薬の使用状況、生活習慣、ほかの病気なども含めて、現在の主治医と確認します。

「降圧薬を飲んでいるのに朝の血圧が高い」「家族から大きないびきも指摘される」といった情報は、まとめて伝えてください。

CPAPを使うと、血圧は下がる?

CPAPによって血圧が下がる場合はありますが、効果には個人差があります。

2025年に発表された、36件の比較試験・9,434人のデータをまとめた解析では、治療開始時に血圧が十分に管理されていなかった患者で、CPAPによる降圧の利益が大きい結果でした。一方、すでに血圧が管理されていた患者では、追加の降圧効果は明確ではありませんでした。

CPAPは、降圧薬の代わりとして自己判断で使い分けるものではありません。 血圧が改善した場合も、薬を減らすかどうかは主治医が判断します。CPAPの使用と、血圧の治療を並行して進めてください。

睡眠時無呼吸と、不整脈・心房細動はどう関係する?

睡眠時無呼吸は、心房細動などの不整脈と関連しています。 特に、心房細動の治療後に再発を繰り返す場合などは、睡眠中の呼吸を確認することが勧められています。

心房細動は、心臓の上側の部屋である心房の動きが乱れる不整脈です。心臓の中に血の塊ができ、その塊が脳の血管へ流れると、脳梗塞につながることがあります。動悸の不快感だけでなく、脳梗塞の予防も重要になる病気です。

CPAPで、心房細動の再発を防げる?

睡眠時無呼吸への対応は重要ですが、CPAPによって心房細動の再発を確実に防げるとは言えません。 米国の心房細動診療ガイドラインでも、睡眠時無呼吸の評価を検討する一方、その治療が正常な心拍リズムの維持にどの程度役立つかは、まだ不確かとしています。

実際に、心房細動と睡眠時無呼吸を併せ持ち、カテーテルアブレーションを受けた83人を対象とする比較試験では、CPAPで無呼吸は改善しましたが、アブレーション後の心房細動の再発率に明確な差はありませんでした。

これは、睡眠時無呼吸を治療しなくてよいという意味ではありません。不整脈の治療と、睡眠時無呼吸の治療は、目的を確認しながら併せて進めます。

CPAPを始めたら、血液を固まりにくくする薬はやめられる?

CPAPを始めたことだけを理由に、抗凝固薬などを中止してはいけません。 心房細動による血栓・脳梗塞の予防は、年齢や持病などを踏まえて別に判断します。脈の状態が落ち着いたように感じても、処方された薬は主治医の指示に従ってください。

狭心症・心筋梗塞・心不全とも関係する?

睡眠時無呼吸は、冠動脈疾患や心不全とも関連しています。 冠動脈疾患は、心臓の筋肉へ血液を送る血管の病気で、狭心症や心筋梗塞などを含みます。すでに心臓の病気がある方でも、睡眠時無呼吸が見逃されていないかを考えることが重要です。

ただし、CPAPは心臓の病気に必要な薬やカテーテル治療を置き換えるものではありません。心筋梗塞などの治療歴がある方は、現在の循環器診療を続けながら、睡眠中の呼吸についても相談してください。

心不全では、無呼吸の種類にも注意する

心不全がある方では、気道が塞がる「閉塞性」だけでなく、呼吸の調節に関わる「中枢性」の無呼吸がみられる場合があります。 また、体にたまった水分が首周りの気道に影響するなど、心不全側の変化が睡眠中の呼吸を悪化させることもあります。

そのため、「無呼吸があるなら、全員同じ機器・同じ設定でよい」ということではありません。 心不全の状態と、睡眠中の呼吸の種類を踏まえた判断が必要です。心不全があることだけでCPAPが一律に使えなくなるわけでもありません。

息切れやむくみが増えたら、CPAPだけを調整すればよい?

新たな息切れ、横になると苦しい、むくみや体重増加が目立つ場合は、心不全などの評価が必要になることがあります。「マスクや圧が合わなくなっただけ」と決めつけず、循環器の主治医などに早めに相談してください。

CPAPのデータだけで、心臓の状態をすべて確認できるわけではありません。普段と違う症状が出たことを、具体的に伝えることが大切です。

睡眠時無呼吸と脳卒中は、どのように関係する?

睡眠時無呼吸は、脳卒中のリスクとも関連しています。 高血圧や心房細動など、脳卒中につながる病気と重なることもあり、睡眠中の呼吸だけを切り離して考えることはできません。

一方、脳卒中の後に、呼吸を調節する仕組みの問題が生じる場合もあります。脳卒中と無呼吸が同時に見つかったからといって、すべてを「無呼吸が脳卒中を起こした」と断定することはできません。

脳卒中の治療歴があり、いびきや呼吸停止、強い眠気などが気になる場合は、主治医に伝えてください。検査方法を選ぶ際にも、脳卒中の既往は重要な情報になります。

睡眠時無呼吸の治療を始めた場合も、血圧や脂質、心房細動などに対する再発予防の治療は、それぞれ継続して確認します。

CPAPを使えば、心筋梗塞や脳卒中を予防できる?

睡眠中の呼吸を改善する効果と、将来の心筋梗塞・脳卒中を減らす効果は、分けて説明する必要があります。 CPAPによる呼吸や眠気の改善は確認されていますが、心臓・脳血管の病気をすべての患者で同じように予防できるとまでは言えません。

大規模な比較試験では、どのような結果だった?

心臓・脳血管の病気と中等症・重症の睡眠時無呼吸を併せ持つ2,717人を対象としたSAVE試験では、平均3.7年間の追跡で、CPAPを追加したグループ全体の心血管イベントは、通常の治療のみのグループより明確には減りませんでした。一方、いびきや眠気、生活の質は改善しました。

この試験は、主に眠気の少ない患者を対象としており、CPAPの平均使用時間は一晩3.3時間でした。この結果だけで、「CPAPは誰の心臓にも役立たない」と結論づけることもできません。 対象者と実際の使用状況を含めて読む必要があります。

十分に使えている人では、違いがある?

3件の比較試験・4,186人のデータをまとめた2023年の解析では、割り当てられた治療群全体の比較では明確な差がなかった一方、CPAPを1日4時間以上使用できていた人で、心臓・脳血管の病気の再発が少ないという関連が認められました。

ただし、使用時間による比較では、治療を続けられる人の健康状態や行動の違いなどが影響する可能性があります。「4時間使えば、誰でも同じ割合で予防できる」と保証する結果ではありません。

また、無呼吸に伴う酸素低下や脈拍の反応によって、心血管への利益・不利益が異なる可能性を示す追加解析もあります。こうした結果は、誰がより利益を得やすいかを検証するための情報であり、自己判断で治療を開始・中止する基準ではありません。

「予防効果を全員に保証できないこと」と「診断された睡眠時無呼吸を治療する意味がないこと」は別です。 自分の場合に何を改善するための治療なのかを、担当医と確認しましょう。

眠気がなくても、検査や治療を考えた方がよい?

眠気がないことだけで、睡眠時無呼吸を否定したり、治療不要と判断したりすることはできません。 自覚症状がはっきりしなくても、家族から呼吸停止を繰り返し指摘されている場合は相談してください。

特に、次のような状況では、睡眠中の呼吸について確認することに意味があります。

現在の状態

相談したい内容

治療しても血圧が十分に下がらない

睡眠時無呼吸が血圧の管理に影響していないか

心房細動の再発を繰り返している

不整脈の治療と併せて、睡眠時無呼吸を評価する必要があるか

心不全があり、いびきや呼吸停止などが気になる

呼吸の種類を含め、どのような睡眠検査が適しているか

家族から呼吸停止を指摘される

眠気の有無にかかわらず、睡眠中の呼吸を調べる必要があるか

米国心臓協会も、治療抵抗性・コントロール不良の高血圧、治療後に再発する心房細動などで、睡眠時無呼吸の評価を勧めています。持病がある人全員に同じ検査をするという意味ではなく、病状と睡眠中の症状に応じて考えます。

心臓の病気がある人も、自宅で検査できる?

持病の状態によって、適した検査が異なります。 睡眠時無呼吸の検査には、自宅で呼吸や酸素の状態などを調べる簡易検査と、脳波なども含めて詳しく調べるPSGがあります。

重要な心臓・肺の病気がある場合や、脳卒中の既往、低換気の疑いなどがある場合には、米国睡眠医学会は簡易検査よりPSGを推奨しています。「自宅で手軽にできる」という理由だけで、すべての人に同じ検査が適しているとは限りません。

検査を相談する際には、現在治療している病気、入院や手術の経験、服用中の薬を伝えてください。

簡易検査で、心臓病や不整脈も分かる?

睡眠時無呼吸の簡易検査は、心臓病や脳卒中を一通り調べる検査ではありません。 呼吸や酸素、脈拍などの記録が得られても、心臓の構造や血管、脳の状態を評価する検査とは目的が異なります。

「無呼吸が見つかったので、動悸や胸の症状の原因もすべて分かった」「簡易検査が正常だったので、心臓にも問題はない」とは考えないでください。心臓や脳血管の症状は、それぞれ必要な診療を受けます。

CPAPと、血圧・心臓の治療をどう組み合わせる?

CPAPだけに頼るのではなく、処方された薬、体重管理、禁煙などの治療・生活習慣への対応も続けます。 睡眠時無呼吸の治療を始めたことは、ほかの病気への対応をやめる理由にはなりません。

CPAP治療では、実際に使えている時間、使用中の呼吸のデータ、空気漏れ、症状を確認します。機器を持っていることだけで、必要な治療が行えているとは限りません。

また、「4時間使ったから、その後は外して寝てよい」という治療ではありません。 原則として、昼寝を含め、眠っている時間に使用します。乾燥やマスクの不快感で外してしまう場合は、その問題を相談してください。

血圧の主治医とCPAPの担当医が異なる場合は、検査結果や治療状況を共有できるようにしておくと、相談内容を整理しやすくなります。例えば、次のように伝えられます。

「高血圧で治療中ですが、家族から呼吸停止も指摘されています。睡眠時無呼吸が関係していないか調べたいです。現在の薬と家庭血圧の記録も持参します。」

CPAP開始後なら、

「CPAPを始めてから、朝の血圧が変わってきました。薬は自分で変えていませんが、治療を調整する必要があるか確認したいです。」

と伝える方法があります。

眠気、血圧、心臓の状態、CPAPの使用データは、それぞれ別の情報です。一つがよくなったことだけで、ほかの治療を終えてよいとは判断しないことが大切です。

胸痛や手足の麻痺があるときは、睡眠検査を待たない

胸が締め付けられるような痛み、急な強い息苦しさ、突然片側の手足に力が入らない、顔の片側がゆがむ、ろれつが回らないといった症状がある場合は、119番に通報してください。「睡眠時無呼吸のせいだろう」と考えて、通常のオンライン診療や検査の予約を待つ状況ではありません。

CPAPを使っている方にも、別の急な病気は起こり得ます。機器の数値がよかったことを理由に、現在の症状を軽視しないでください。

ひさいクリニックで、睡眠時無呼吸の検査・CPAP治療を相談する

ひさいクリニックでは、睡眠時無呼吸が疑われる方に、オンライン診療と自宅での簡易検査を組み合わせた診療をご案内しています。

診察で症状を確認し、必要に応じて自宅簡易検査をご案内します。検査機器はご自宅へ郵送されます。届いた機器の説明を読み、ご自宅で装着して検査を行っていただく方法です。

予約 → オンライン診察 → 検査機器の郵送 → 自宅で検査 → 結果説明・CPAP治療の適応判断

検査後は結果をご説明し、CPAP治療の適応を判断します。検査を受けた方全員がCPAP治療を始めるわけではありません。

高血圧や心臓病、脳卒中などで治療中の方は、病名、現在の治療、服用中の薬をお伝えください。当院の郵送型簡易検査は、心不全や不整脈、脳卒中そのものを詳しく調べる検査ではありません。 持病の診療は、現在の主治医のもとで継続してください。

「高血圧の治療中で、いびきも指摘される」「家族から睡眠中の呼吸停止を指摘された」「日中は眠くないが、睡眠時無呼吸がないか調べたい」という方は、WEB予約からご相談ください。

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