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基礎知識

睡眠時無呼吸と認知症・認知機能低下の関係

久井 宏真

2026/9/7

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、日中の眠気だけでなく、集中しにくさや記憶・判断に関わる働きにも影響することがあります。また、将来の認知機能低下や認知症との関連も研究されています。 ただし、睡眠時無呼吸がある人全員が認知症になるわけではありません。

CPAPなどで睡眠中の呼吸を改善することは大切ですが、「CPAPを使えば認知症を必ず予防できる」「認知症が治る」とまでは言えません。 現在困っている眠気や注意力の問題と、長期的な認知症予防は、分けて考える必要があります。

この記事では、成人の閉塞性睡眠時無呼吸を中心に、認知機能への影響、治療で期待できること、もの忘れがある場合の受診について解説します。

睡眠時無呼吸で、集中力や記憶力が落ちることはある?

睡眠時無呼吸では、集中しにくい、反応が遅くなる、物事を覚えにくいといった問題が現れることがあります。 認知機能とは、記憶だけでなく、注意を向ける、情報を理解する、順序立てて考えるなどの働きを含みます。

例えば、「会議の内容が頭に入らない」「以前より仕事に時間がかかる」「朝から頭がはっきりしない」と感じる場合があります。ただし、こうした困りごとだけで、睡眠時無呼吸が原因と決まるわけではありません。睡眠不足や薬の影響、ほかの病気なども含めて確認します。

集中力が落ちたら、すでに認知症?

集中力の低下や、もの忘れがあることだけで、認知症とは診断しません。

認知症では、記憶や判断などの働きが低下し、日常生活や社会生活に支障が生じます。一方、認知機能の低下があっても、日常生活の自立が概ね保たれている状態は、軽度認知障害(MCI)として区別されます。

「最近忘れっぽい=認知症」でも、「いびきがあるから、もの忘れはすべて無呼吸のせい」でもありません。 症状の経過と生活への影響を確認し、必要な評価を受けることが大切です。

なぜ睡眠時無呼吸が、脳の働きに関係する?

睡眠の分断と、繰り返す酸素低下などが関係すると考えられています。

閉塞性睡眠時無呼吸では、眠っている間に気道が狭くなったり塞がったりして、呼吸が弱くなる・止まる状態を繰り返します。その際、睡眠が何度も妨げられたり、血液中の酸素が低下したりすることがあります。

こうした変化に加え、炎症や血管への影響などが、長期的な認知機能低下に関わる可能性も研究されています。ただし、一つの仕組みだけですべてを説明できるわけではなく、一人ひとりのもの忘れの原因を、この説明だけで特定することもできません。

睡眠時無呼吸があると、認知症になりやすい?

睡眠中の呼吸障害がある人では、その後に認知機能の低下が起こりやすいという報告があります。 ただし、研究の対象者や検査方法によって結果は異なり、「睡眠時無呼吸があれば、誰でも同じ確率で認知症になる」という意味ではありません。

例えば、研究開始時に認知症のなかった高齢女性298人を平均約4.7年間追跡した研究では、睡眠中の呼吸障害があった人で、軽度認知障害または認知症が多く認められました。

研究開始時の睡眠中の呼吸

追跡中に軽度認知障害または認知症と判定された割合

AHIが15未満

31.1%

AHIが15以上

44.8%

この数字は、高齢女性を対象とした一つの研究結果です。認知症だけでなく軽度認知障害も含んでおり、若い人や男性にそのまま当てはめることはできません。 また、関連が認められることと、睡眠時無呼吸だけが原因だと証明されることは別です。

「将来必ず認知症になる」と怖がるのではなく、睡眠時無呼吸が疑われる場合に、検査と治療の必要性を確認することが重要です。

CPAPで、集中力や記憶力は改善する?

睡眠時無呼吸の治療で、認知機能の一部に改善がみられる場合があります。ただし、改善する項目や程度は一律ではありません。

CPAPは、睡眠中に空気の圧で気道を開いた状態に保ち、無呼吸や低呼吸を抑える治療です。まずは、睡眠中の呼吸を改善し、眠気や睡眠に関連する困りごとに対応することが治療の目的になります。

一方、1,098人を解析した大規模な比較試験では、CPAPによって眠気は改善しましたが、6か月時点の主要な認知機能検査では、対照群との明確な差は認められませんでした。 一部の対象者や評価時点では改善がみられたものの、記憶力や判断力のすべてが確実に回復するという結果ではありません。

そのため、「CPAPを始めれば、もの忘れが必ずなくなる」とは考えず、呼吸の改善と日常生活の変化をそれぞれ確認します。

治療を始めても、もの忘れが残る場合は?

もの忘れが続くことだけで、CPAPが無意味とは判断できません。 CPAPの使用状況や呼吸の改善を確認するとともに、認知機能の問題について別の評価が必要かを考えます。

特に、症状が進んでいる、仕事や家事に支障がある、家族から以前との違いを指摘される場合は、「CPAPでもう少し様子を見ればよい」と考えて、もの忘れの受診を先延ばしにしないことが大切です。

CPAPを続ければ、認知症を予防できる?

認知機能の低下を抑える可能性は研究されていますが、認知症の予防効果が確立したとは言えません。

2026年に報告された、睡眠時無呼吸のある高齢者777人を最長10年間追跡した研究では、CPAP治療の記録がある人は、ない人に比べて認知機能の低下が緩やかでした。

ただし、この研究は治療する人としない人を無作為に分けた試験ではありません。治療の有無は保険請求の記録で判定され、毎晩の実際の使用状況までは確認できていません。治療を受ける人の健康状態や生活習慣などの影響も残るため、「CPAPが認知症を予防した」と断定することはできません。

将来の認知症予防を保証するのではなく、現在確認されている睡眠時無呼吸を適切に治療する。そのうえで、長期的な認知機能への利益も期待しながら経過を見る、という位置づけです。

なお、認知症予防だけを目的に、睡眠時無呼吸の診断を受けずにCPAPを始めるものではありません。治療は、検査結果や症状に基づいて適応を判断します。

すでに軽度認知障害や認知症があっても、治療できる?

軽度認知障害や認知症がある方でも、睡眠時無呼吸が確認されれば、その治療を検討できます。 実際に、アルツハイマー病と睡眠時無呼吸を併せ持つ患者を対象としたCPAPの研究も行われています。

ただし、治療を続けられるかは、本人の理解や負担、マスク・機器の扱いやすさ、周囲の支援なども含めて考えます。装着や操作で困ることがあれば、ご家族からも担当医に伝えてください。認知機能が低下している方のCPAP継続についても、支援方法を含めた研究が行われています。

CPAPは、併存する睡眠時無呼吸への治療です。認知症の診療や生活上の支援に置き換わるものではありません。

もの忘れといびきがある場合、何科に相談する?

もの忘れの評価と、睡眠中の呼吸の評価を、両方の視点で進めます。 まず、かかりつけ医やもの忘れ外来で、気になっている変化を相談してください。

大きないびきや睡眠中の呼吸停止もある場合は、睡眠時無呼吸の検査に対応する内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科などに相談できます。すでに認知症などで通院している方は、現在の診断や治療内容も伝えてください。

このような変化は、もの忘れ自体の評価も受ける

同じことを何度も聞く、慣れた道で迷う、薬やお金の管理が難しくなるなどの変化がある場合は、日常生活への影響を含めた評価が必要です。「眠りが悪いだけ」「年齢のせい」と決めつけず、家族が気づいた変化も伝えてください。

一方、急に会話が成り立たなくなった、急に混乱して場所や人が分からなくなった場合は、通常のもの忘れとは分けて考え、速やかに救急医療につなげてください。 睡眠時無呼吸の検査予約を待つ状況ではありません。

どのような場合に、睡眠時無呼吸の検査を考える?

集中しにくさやもの忘れに加えて、大きないびき、呼吸停止、あえぐような呼吸、朝の頭痛、日中の眠気などがある場合は、睡眠中の呼吸について相談してください。

特に、呼吸停止を繰り返し指摘されている場合は、眠気が目立たなくても検査を相談する理由になります。「眠くないから、脳の働きにも影響はない」とは判断できません。

ただし、もの忘れがある人全員に、同じ睡眠検査を行うわけではありません。症状や持病、睡眠習慣などを確認し、医師が検査の必要性と方法を判断します。

受診前に、何をまとめておくとよい?

もの忘れについては、「いつ頃から」「何ができなくなったか」「生活でどのように困っているか」を、具体的な出来事で伝えると説明しやすくなります。睡眠については、いびきや呼吸停止の指摘、普段の睡眠時間、日中の居眠りなどを整理してください。

服用中の薬も確認に必要です。記録を完全に揃える必要はありませんが、本人が気づきにくい変化について、ご家族から情報を補ってもらうと役立ちます。

自宅の簡易検査で、認知症も分かる?

睡眠時無呼吸の簡易検査は、認知症を診断する検査ではありません。

自宅の簡易検査では、小型の機器を装着して眠り、睡眠中の呼吸や血液中の酸素の状態などを調べます。必要に応じて、脳波なども測定するPSG(睡眠ポリグラフ検査)で詳しく評価します。

無呼吸が見つかっても、もの忘れの原因がすべて分かったという意味ではありません。反対に、簡易検査が正常でも、認知症がないと確認されたわけではありません。 認知機能については、症状の聞き取り、認知機能検査、必要に応じた画像検査など、別の評価を行います。

また、睡眠時無呼吸を疑って行った簡易検査が陰性・判定不能だった場合や、記録が不十分だった場合には、それだけで睡眠時無呼吸を否定せず、PSGによる詳しい評価が推奨されています。

ひさいクリニックで、睡眠時無呼吸の検査を相談する

ひさいクリニックでは、睡眠時無呼吸が疑われる方に、オンライン診療と自宅での簡易検査を組み合わせた診療をご案内しています。

診察で症状を確認し、必要に応じて自宅簡易検査をご案内します。検査機器はご自宅へ郵送されます。届いた機器の説明を読み、ご自宅で検査を行っていただく方法です。

予約 → オンライン診察 → 検査機器の郵送 → 自宅で検査 → 結果説明・CPAP治療の適応判断

検査後は結果をご説明し、CPAP治療の適応を判断します。検査を受けた方全員がCPAP治療を始めるわけではありません。オンライン診療の可否や、必要な検査は診察で判断します。

この検査は、睡眠時無呼吸を調べるためのものです。もの忘れの原因全体や認知症の有無を調べる検査ではありません。 もの忘れが進んでいる場合や生活への支障がある場合は、かかりつけ医やもの忘れ外来での相談も進めてください。

「最近集中しにくく、いびきも指摘されている」「家族から睡眠中の呼吸停止を指摘された」「睡眠時無呼吸が関係していないか調べたい」という方は、WEB予約からご相談ください。

睡眠時無呼吸の検査を相談する




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