CPAP治療
CPAP療法とは?効果・費用・治療継続のポイントを医師が解説
久井 宏真
2026/9/5
CPAP療法は、睡眠中にマスクから空気を送り込み、喉の気道が閉じるのを防ぐ治療です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する代表的な治療で、適切に使用すれば無呼吸や低呼吸、いびき、睡眠中の酸素低下を大きく減らせます。
CPAPは手術ではなく、自宅で毎晩行う治療です。保険診療では医療機関から機器を借り、定期的な診察を受けながら使用します。
CPAP療法とは
CPAPは「Continuous Positive Airway Pressure」の略で、日本語では持続陽圧呼吸療法と呼ばれます。
睡眠中は喉の筋肉が緩み、舌や軟口蓋などによって気道が狭くなることがあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、気道が部分的または完全に塞がり、呼吸が浅くなったり止まったりします。
CPAPは、鼻または鼻と口を覆うマスクから一定の圧力をかけた空気を送り、気道を内側から広げます。空気の通り道を確保することで、睡眠中の無呼吸や低呼吸を防ぎます。
酸素そのものを送り込む治療ではありません。また、肺の代わりに呼吸する人工呼吸器とも異なります。
CPAPにはどのような効果がある?
CPAPを適切に使用すると、次のような効果が期待できます。
・睡眠中の無呼吸や低呼吸を減らす
・血液中の酸素濃度の低下を改善する
・いびきを減らす
・日中の眠気や疲労感を改善する
・起床時の頭痛を改善する
・睡眠に関連する生活の質を改善する
・高血圧患者の血圧を下げる可能性がある
・居眠り運転や作業中の眠気を減らす
効果の現れ方には個人差があります。眠気や頭痛が早い段階で改善する人もいれば、睡眠時間不足、ほかの睡眠障害、薬の影響などが重なり、CPAPを使用しても眠気が残る人もいます。
CPAPを使って無呼吸低呼吸指数(AHI)が十分に低下しているのに日中の眠気が続く場合は、使用時間やマスク漏れだけでなく、睡眠時間、生活リズム、ほかの病気や服薬についても確認します。
AASMの診療ガイドラインでは、強い日中の眠気がある成人の閉塞性睡眠時無呼吸に対して、PAP療法を行うことが推奨されています。
CPAPは睡眠時無呼吸症候群を治すの?
CPAPは、使用している間に気道が閉じるのを防ぐ治療です。原則として、睡眠時無呼吸症候群の原因そのものを取り除く治療ではありません。
そのため、自己判断でCPAPを中止すると、無呼吸やいびきが再び現れることがあります。
一方、大幅な減量、扁桃や鼻・顎の治療、生活習慣の変化などによって重症度が改善する場合があります。CPAPが不要になった可能性がある場合も、自己判断で中止せず、再検査を受けて判断します。
どのような人がCPAP治療の対象になる?
CPAPの適応は、睡眠検査の結果、症状、合併症などを総合して判断します。
日本の保険診療では、一般に次の検査結果が適用判断の目安になります。
・簡易検査でAHIまたはREIが30以上
・精密検査(PSG)でAHIが15以上
ただし、検査方法や自覚症状、睡眠中の所見など、ほかの条件も含めて判断します。数値だけで自動的にCPAPが決まるわけではありません。
簡易検査で30未満でも、症状や合併症から治療が必要と考えられる場合は、PSGによる詳しい評価を検討します。
CPAP治療を始めるまでの流れ
ひさいクリニックでは、次の流れでCPAP治療を開始します。
1.オンライン診察で検査結果を確認する
簡易検査の解析が完了したらショートメッセージでご連絡します。オンライン診察をご予約いただき、無呼吸の重症度や治療の必要性について説明します。
2.CPAP機器とマスクを準備する
CPAPの適応がある場合は、機器とマスクを準備します。機器の操作方法、マスクの装着方法、清掃方法などを確認して治療を開始します。
3.自宅でCPAPを使用する
就寝時にマスクを装着し、CPAPを使用します。夜間に途中で外してしまった場合も、使用できた時間や困った点を確認しながら調整していきます。
4.治療開始後に一度対面診察を受ける
CPAPの使用開始後、一度ひさいクリニックで対面診察を行います。使用状況、マスクの装着状態、体調などを確認します。
5.月1回のオンライン診察を受ける
その後は原則として月1回、オンライン診察を行います。使用時間、治療中のAHI、マスク漏れなどのデータを確認し、治療を継続します。
CPAPの費用はいくら?
CPAPは、保険適用の基準を満たす場合、機器を購入するのではなく、医療機関を通してレンタルする形が一般的です。
2026年度の診療報酬をもとにすると、3割負担の患者さんでは、CPAPの機器使用料と管理料などを合わせて月額約3,800~4,500円が一つの目安です。
実際の自己負担額は、負担割合、診察方法、初診・再診、追加の検査や処方、医療機関の届出状況などによって異なります。
1割負担または2割負担の方は、自己負担額もそれに応じて低くなります。正確な費用については診察時にご確認ください。
CPAPは毎晩何時間使えばよい?
CPAPは、原則として眠っている間は継続して使用します。昼寝をする場合も装着することが理想です。
「1日4時間使えば十分」と説明されることがありますが、4時間は治療効果が完了する境界ではありません。CPAPを外したあとの睡眠中には、再び無呼吸が起こる可能性があります。
まずは装着に慣れることが大切ですが、最終的には睡眠時間全体で使用することを目指します。
使用時間が短い場合は、根性で我慢するのではなく、マスク漏れ、鼻づまり、圧力への違和感など、使用できない原因を特定して調整します。
CPAPを継続できない主な原因と対策
マスクから空気が漏れる
マスクの位置やベルトの締め方を確認します。強く締めすぎると、かえってマスクが変形して漏れやすくなることがあります。
顔の形に合わない場合は、別のサイズや種類のマスクを検討します。
鼻や喉が乾燥する
加温加湿器を使用すると改善することがあります。口から空気が漏れている場合は、マスクの種類や装着状態も確認します。
鼻づまりがある
アレルギー性鼻炎などがある場合は、鼻の治療を行います。強い鼻閉が続く場合は、耳鼻咽喉科での評価が必要になることがあります。
圧力が強く感じる
CPAPには、眠り始めの圧力を低くする機能や、呼吸状態に応じて圧力を調整する機能があります。設定を自己判断で変更せず、診察時に相談してください。
マスクが苦しい、閉所恐怖感がある
起きている時間に短時間装着し、呼吸に慣れてから眠る方法があります。小さいマスクへ変更できる場合もあります。
お腹に空気がたまる
空気を飲み込むことで、腹部膨満感やげっぷが出ることがあります。体位、マスク、圧力設定などを確認します。
皮膚が痛い、赤くなる
ベルトの締めすぎや、マスクのサイズが合っていない可能性があります。保護材の使用やマスク変更を検討します。
CPAPのデータでは何を確認する?
定期診察では、機器に記録された次のような情報を確認します。
・CPAPを使用した日数
・1日あたりの使用時間
・治療中のAHI
・マスクからの空気漏れ
・使用された圧力
・中枢性無呼吸を含む呼吸イベントの内訳
治療中のAHIが低くても、使用時間が短ければ、一晩全体として十分に治療できていない可能性があります。
反対に、使用時間が長くても、マスク漏れが多い、治療中のAHIが高い、眠気が改善しない場合は、原因を確認する必要があります。
数値だけを見るのではなく、本人の体調や睡眠の状態と合わせて評価します。
CPAP機器とマスクのお手入れ
マスクやホースに皮脂、ほこり、水分などが残ると、においや皮膚刺激の原因になります。
具体的な清掃方法は使用する機器の説明書に従ってください。一般的には、マスクの顔に触れる部分や加湿器の水タンクを定期的に洗浄し、十分に乾燥させます。
機器本体を水洗いしたり、指定されていない洗剤や消毒剤を使用したりしないでください。
フィルターや消耗品の交換時期は機種によって異なります。
よくある質問
CPAPを一晩使い忘れたら危険ですか?
一晩使用しなかったからといって、必ず重大な問題が起こるわけではありません。ただし、その夜は無呼吸が再び起こる可能性があります。特に眠気が出る場合は、運転や危険作業を避けてください。
旅行や出張にCPAPを持って行けますか?
多くのCPAP機器は持ち運び可能です。飛行機を利用する場合は、航空会社の規定や電源について事前に確認してください。
CPAPを使ってもいびきが残ることはありますか?
マスク漏れ、使用時間不足、圧力が十分でない、口呼吸などによって、いびきが残ることがあります。診察時に使用データを確認します。
CPAP使用中に眠気が残る場合はどうしますか?
まず、使用時間、AHI、マスク漏れ、睡眠時間を確認します。十分に治療できている場合は、睡眠不足、薬の影響、ほかの睡眠障害や病気について検討します。
痩せたらCPAPをやめられますか?
体重減少によって睡眠時無呼吸が改善することはあります。ただし、骨格や舌の大きさなども影響するため、減量だけで治るとは限りません。中止前に再検査が必要です。
市販のCPAPを購入して自分で使ってもよいですか?
CPAPは圧力設定や効果判定、マスク調整が必要な医療機器です。自己判断で使用せず、医師の診断と管理のもとで治療してください。
CPAP治療をご希望の方へ
ひさいクリニックでは、オンライン初診、自宅での簡易検査、オンラインでの結果説明を行っています。
CPAP治療開始後は一度対面で診察し、その後は原則として月1回のオンライン診察で、使用時間、治療中のAHI、マスク漏れ、体調などを確認します。
毎月の通院負担を減らしながら、CPAP治療を継続できます。
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執筆・監修:久井宏真 医師
ひさいクリニック院長
本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。治療の適応や機器設定については医師へご相談ください。
参考資料
・American Academy of Sleep Medicine:成人閉塞性睡眠時無呼吸に対するPAP療法ガイドライン
・日本循環器学会「2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」
・厚生労働省「令和8年度 医科診療報酬点数表」
・American Heart Association:閉塞性睡眠時無呼吸と心血管疾患