基礎知識
睡眠時無呼吸症候群とは?症状・原因・放置するリスク
久井 宏真
2026/9/5
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする状態を繰り返す病気です。大きないびき、家族から指摘される無呼吸、起床時の頭痛、日中の強い眠気などが代表的なサインです。
放置すると眠気や集中力低下だけでなく、高血圧、心血管疾患、脳卒中などと関連するため、疑わしい場合は睡眠検査で確認することが大切です。
## 睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、英語でSleep Apnea Syndromeといい、頭文字を取って「SAS」と呼ばれます。
最も多いのは、眠っている間に舌や喉の周囲の組織によって上気道が狭くなる「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」です。呼吸が止まったり浅くなったりすると、血液中の酸素濃度が低下し、脳が短時間覚醒して呼吸を再開させます。
本人に目が覚めた自覚がなくても、この反応が一晩に何度も起こることで睡眠が細切れになり、十分な時間眠っても疲れが取れない状態になります。
## 睡眠時無呼吸症候群の主な症状
睡眠中には、次のような症状がみられます。
・大きないびきを繰り返す
・いびきが突然止まり、その後大きな呼吸音とともに再開する
・家族から呼吸が止まっていると指摘される
・息苦しさや窒息感で目が覚める
・寝汗をかく
・夜中に何度もトイレへ行く
・口や喉が乾く
起床時や日中には、次のようような症状が現れることがあります。
・朝起きたときの頭痛
・十分寝ても疲れが取れない
・日中の強い眠気
・集中力や記憶力の低下
・仕事中や運転中に眠くなる
・イライラや気分の落ち込み
ただし、睡眠時無呼吸症候群があっても、強い眠気を自覚しない人もいます。「眠くないから大丈夫」とは限りません。
## 睡眠時無呼吸症候群の原因
成人の閉塞性睡眠時無呼吸では、肥満が重要な要因の一つです。首や喉の周囲に脂肪がつくと、睡眠中に気道が狭くなりやすくなります。
一方、日本人を含むアジア人では、肥満が目立たなくても、顎が小さい、下顎が後退している、舌が大きいなどの骨格的な特徴によって発症することがあります。
主なリスク要因には次のものがあります。
・肥満または最近の体重増加
・首が太い
・小さい顎や後退した下顎
・大きな舌や扁桃
・鼻づまり
・加齢
・男性
・閉経後の女性
・就寝前の飲酒
・睡眠薬や鎮静薬の使用
・家族に睡眠時無呼吸の人がいる
痩せている人や女性でも発症するため、体格だけで判断することはできません。
## 睡眠時無呼吸症候群を放置するとどうなる?
未治療の睡眠時無呼吸では、低酸素と短い覚醒が繰り返されます。その結果、交感神経が活性化し、血圧や心臓、血管へ負担がかかります。
睡眠時無呼吸は、次の病気や問題と関連することが報告されています。
・高血圧
・心房細動などの不整脈
・狭心症や心筋梗塞
・心不全
・脳卒中
・糖尿病やインスリン抵抗性
・認知機能や集中力の低下
・居眠り運転や労働災害
ただし、睡眠時無呼吸があれば必ずこれらの病気になるという意味ではありません。年齢、肥満、喫煙、既存の生活習慣病なども影響します。
日本循環器学会のガイドラインでも、睡眠呼吸障害と各種心血管疾患との関連が示されています。
## どのような場合に検査を受けるべき?
次の項目に当てはまる場合は、一度睡眠検査を検討してください。
・家族から無呼吸を指摘された
・大きないびきを繰り返す
・睡眠中に息苦しくなって目が覚める
・十分眠っても日中に強い眠気がある
・朝の頭痛や疲労感が続く
・運転中や仕事中に眠りそうになる
・肥満と高血圧がある
・複数の降圧薬を使用しても血圧が高い
・心房細動、心不全、脳卒中などの既往がある
問診票やスマートウォッチ、いびき録音アプリは、受診を考えるきっかけにはなります。しかし、それだけで睡眠時無呼吸症候群を確定または否定することはできません。
## 睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の診断には、睡眠中の呼吸状態を測定する検査が必要です。
自宅で行う簡易検査では、鼻の気流、呼吸運動、血液中の酸素濃度、脈拍などを測定します。検査機器を装着して普段どおり眠るため、入院する必要はありません。
検査では、睡眠1時間あたりに起こる無呼吸と低呼吸の回数を示す「AHI」などを確認します。一般にAHIが5以上15未満は軽症、15以上30未満は中等症、30以上は重症の目安です。ただし、検査方法や症状、合併症を含めて医師が総合的に判断します。
簡易検査の結果が陰性でも、症状が強い場合や結果が不明確な場合、心肺疾患などがある場合には、医療機関で行う精密検査(PSG)が必要になることがあります。AASMの診療ガイドラインでも、問診票だけでは診断せず、適切な睡眠検査を行うことが推奨されています。
## 睡眠時無呼吸症候群の治療
治療方法は、重症度、症状、体格、気道の形態、合併症などによって異なります。
代表的な治療には次のものがあります。
・CPAP療法
・減量などの生活習慣改善
・横向きで眠る体位療法
・マウスピース(口腔内装置)
・鼻や喉、顎に対する治療や手術
中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸では、CPAP療法が中心的な治療となります。CPAPは、睡眠中にマスクから空気を送り、気道が閉じるのを防ぐ治療です。
治療方法は検査結果だけで機械的に決めるのではなく、症状や生活状況、治療の続けやすさも含めて選択します。
## よくある質問
### いびきをかく人は全員、睡眠時無呼吸症候群ですか?
いいえ。いびきだけで無呼吸を伴わない人もいます。ただし、大きないびきが続く、いびきが途中で止まる、家族から無呼吸を指摘される場合は検査を勧めます。
### 痩せていても睡眠時無呼吸になりますか?
なります。顎の大きさや位置、舌や扁桃の大きさ、鼻づまりなどが原因になるため、痩せている人でも発症します。
### 日中の眠気がなければ検査は不要ですか?
眠気を自覚しない患者さんもいるため、眠気がないだけでは否定できません。家族から無呼吸を指摘された場合や、高血圧などの合併症がある場合は検査を検討します。
### スマートウォッチだけで診断できますか?
現時点では、スマートウォッチやアプリだけで確定診断することはできません。異常を指摘された場合は、医療機関で睡眠検査を受けてください。
### 睡眠時無呼吸の検査は自宅でできますか?
合併症のない成人で閉塞性睡眠時無呼吸が疑われる場合、自宅での簡易検査が可能です。ただし、結果が不明確な場合や特定の基礎疾患がある場合には、精密検査が必要になることがあります。
## ひさいクリニックの睡眠時無呼吸診療
ひさいクリニックでは、初診と検査結果の説明をオンラインで行い、ご自宅で受けられる簡易検査をご案内しています。
CPAP治療が適応となった場合は、治療開始後に一度対面で使用状況や体調を確認します。その後は、原則として月1回のオンライン診療で治療を継続します。
「無呼吸を指摘された」「いびきや日中の眠気が気になる」という方は、オンライン初診をご予約ください。
執筆・監修:久井宏真 医師
ひさいクリニック院長
本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や検査結果については医師へご相談ください。
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## 参考資料
・[厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html)
・[日本循環器学会「JCS 2023 Guideline on Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease」](https://www.j-circ.or.jp/english/topics/new-releases-2023-guideline-on-diagnosis-and-treatment-of-sleep-disordered-breathing-in-cardiovascular-disease/)
・[American Academy of Sleep Medicine:成人OSAの診断検査ガイドライン](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28162150/)
・[American Heart Association:閉塞性睡眠時無呼吸と心血管疾患](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34148375/)
・[National Heart, Lung, and Blood Institute:Sleep Apnea](https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-apnea)